上川大雪酒造の酒造り

 

 

— 酒米と生産者の話—

 
品質向上が目覚ましい北海道産酒造好適米

上川大雪酒造では、原料米は『吟風(ぎんぷう)』、『彗星(すいせい)』、『きたしずく』という三種類の北海道産酒造好適米だけを使用します。
北海道の酒造好適米は、全国新酒鑑評会で金賞を受賞している例もあり、今では、本州の多くの蔵で北海道産の酒米が使用されています。

短いようで長い、北海道の酒米の歴史

現在、最高の酒造好適米と言われている『山田錦』が誕生したのが1936年(昭和11年)。
北海道に初めて酒造好適米が誕生したのは1998年(平成10年)、『初雫』(はつしずく)という名の酒米でした。『山田錦』が世に出て半世紀以上後になってからのことです。
「北海道に本格的な酒米をつくろう」と官民合同で北海道酒米研究会が発足したのは1970年。
以降、『初雫』がデビューするまでに30年近くもの歳月を要したのは、道産米は冷害対策によりタンパク含有量が高かったためです。酒米にタンパク質が多いのは、酒造りにとってはマイナスなので、これがネックになっていました。
それでもあきらめなかったのは、関係者の「北海道の米で、全国に誇れるうまい道産酒を!」という情熱です。
特に上川管内愛別町は『初雫』の試験栽培段階からかかわっている生産者が多く、牽引役を担ったのは、かつて愛別町にあった酒蔵で杜氏を務めた方だったという逸話も語り継がれています。
 
 

北海道産酒米3兄弟のプロフィール

『初雫』は道内初の酒造好適米として注目されましたが、玄米での心白(米の中心部にデンプンが白く見える部分)発現率が低かったことなどもあり、2000年(平成12年)デビューの『吟風』、2006年(平成18年)登場の『彗星』、そして2014年(平成26年)誕生したばかりの『きたしずく』へと引き継がれていきます。

— 吟風—
広島県を代表産地とする『八反錦』を親にもちますが、淡麗というよりは、適度な香りと旨味とコクがあるタイプのお酒が多いようです。
— 彗星—
『初雫』と『吟風』の交配種。どちらかというと香りも味わいも穏やかで、淡麗辛口のお酒に仕上がる傾向にあります。
— きたしずく—
『雄町米』と『吟風』の系譜をひく酒米で、香味的には吟風と彗星の間くらいの感じに位置します。バランスの取れた味わいに適度な香りときれいな酸が感じられます。
 

 
当社・杜氏と北海道産米の出会い

杜氏が40歳を節目に北海道に戻ってきたのは2010年。それまで石川県を皮切りに本州の五つの蔵で修行を重ね、多彩な経験を積んできたものの、北海道産の酒米を扱うのは初めてでした。
品種改良がめざましく進んだとはいえ、本州の酒米に比べるとやはりタンパク質の量は多く溶けにくい、どうしたものかと悩んだ末に、「田んぼに行って生産者と直に会って話をする。」という結論にたどり着きました。
北海道の酒米の歴史を紐解くうちに、北海道の酒造好適米開発に黎明期から心血を注いできた農業関係者が近隣の愛別町に多くいらっしゃる事実を知り、足を運びます。
そこで、低タンパク米を育てるためには品種改良ばかりではなく、圃場の場所、土壌、施肥、圃場の手入れ、水回りの管理など、現場の細やかな心配りが必要であることを知ります。そして、「原料以上のものは造れない。」という真実にあらためて思いを深めました。
酒米生産地に何度も足を運び語り合ううちに「自分の米でうまい酒を造ってほしい」という農家さんが少しずつ増えていきます。
砂川では、「低タンパクの素晴らしい米を作っている熱い農家がいて、酒米を作りたいと言っているのでぜひ会って欲しい。」と得意先の酒販店さんから声がかかります。 砂川市の酒販店さんの情熱は、篤農家と醸造家を巻き込んでかけがえのない絆を創ってくださいました。
※篤農家(とくのうか)〜 熱心で、研究心に富んだ農業家のこと。​
 

生産者の想いを酒に生かす

上川大雪酒造は2020年11月現在、実績のある地元愛別町、南幌町と砂川市の酒米農家さんを中心に、当別町、雨竜町、名寄市、日高町、永山町、士別市、函館市、全道10地域の信頼関係で結ばれた農家さんと原料米供給の契約をさせていただいております。 十勝“碧雲蔵”がスタートし、「上川大雪酒造の原料米として、自分が作った酒米を使って欲しい」という農家さんも、ありがたいことにますます増えてきています。
蔵が2つになっても、酒造りのスタイルは変わることなく「普通に造る」。いただいた原料米は、生産者ごとに分けて造るので、誰がどこで栽培した米で造った酒なのかがわかります。
その米の個性を生かした酒を造るため、少量小仕込みは変わりません。
「自分の作った米がこんなにうまい酒になった。」そう言っていただけること、また、一人でも多くの方に北海道の酒米の素晴らしさを知っていただくことが、契約農家の皆さんにいただいたご縁とご恩に報いることだと信じて、私たちは「飲まさる酒」を造り続けます。

 

— 水の話—

 
〖上川“緑丘蔵”〗
繊細でやわらかな酒を育む大雪山水系の超軟水


大雪山系の雪どけ水は、長い年月をかけて地層を抜けて伏流水となって上川管内の多くの場所に天然湧水群を作っています。
“緑丘蔵”の水の硬度は28mg/L(硬度22)。一般的に100mg/L以下を軟水と言っていますので、超のつく軟水の部類に入ります。シルクのようにしなやかな口あたりは超軟水ならでは。そして、ここからが“緑丘蔵”の水の違うところです。 普通、超軟水の場合、口中では淡くふわふわとした感覚からスーッと喉に消えていくイメージです。一方、“緑丘蔵”の水は、ある程度の量感というか芯のようなものを意識させながら、スルっと喉に滑っていく感じです。これは「絶妙のミネラルバランス」によるもので、もちろん望んで手に入るものではありません。
総杜氏:川端慎治をして「酒造りにおける水の大切さを改めて認識した」と言わしめたこの水の素晴らしさは、上川の地に宿る神様の贈り物です。

〖十勝“碧雲蔵”〗
力強さとキレを支える札内川水系の中硬水


十勝“碧雲蔵”の水は、上川町“緑丘蔵”とは対照的に中硬水(硬度103)。日高山脈に源をなし、何度も日本一の清流に輝いた・札内川水系の名水です。 飲みくらべてみると、“緑丘蔵”の水よりも確かに強いミネラルが感じられます。
この中硬水で醸される酒は、“緑丘蔵”の繊細でやわらかな酒質に比して、力強さとキレが際立つ男性的な印象の「飲まさる酒」。川端総杜氏曰く「ゴクッと飲み応えのある、飲兵衛向けの酒か、熟成して円くなったときに旨味が膨らむ燗向けの酒か…」。
農業従事者の多い食の宝庫・十勝にあって、地元の日本酒ファンにこよなく愛される食中酒を造るには、これ以上ないうってつけの仕込水なのです。
 
 

— 造りの話—

 
普通に造る

すべてのタンクが2500ℓ未満。タンク一本あたりに使う米は600〜750圈 10圓困鎮寧に米を洗い、ストップウォッチを使って限定吸水。放冷機は使わず、手作業の自然放冷。年平均気温5.3℃の上川町ならでは。 麹は全量6〜7kg盛りの小さな箱麹造り。70%の純米から、35%の純米大吟醸まで、約50本の仕込みを10月〜7月まで、10ヵ月かけて一本一本ほぼ同じペースで仕込みます。
一度にたくさんの量は仕込めません。すべての仕込みが、まるで大吟醸の仕込みのようですが、これが、上川大雪が行っていく「普通の造り」です。生産者の想いがこもった大切な原料米を、丁寧に洗い、蒸し、麹にしていきます。原料米と対話し、醪と対話し、酒を醸していきます。 精米歩合の違いがあっても造りの丁寧さを変えることはありません。タンク一本一本、同じように時間と手間をかけて造っています。搾ったお酒は、全量「生」または「瓶燗」一度火入れで瓶詰されます。 タンクでの貯蔵は行いません。濾過は最低限のフィルターをかけるだけで、活性炭の類は一切使用しません。

 

上川大雪酒造が目指す日本酒

 

究極の食中酒としての「飲まさる酒」。
そして今、わたしたちは三種類の北海道産米の個性をどこまで引き出せるのか、新たに挑戦する気持ちで、 いろいろなタイプの日本酒を造っていきたいと考えています。

その試行錯誤の中から、それぞれの酒米に合った、
それぞれの磨きに適した、最高のオール北海道産の「飲まさる酒」を見つけ出せるのではないかと期待しています。

今回オンラインショップで皆さんが出会われる日本酒も、
きっと一本一本、香りも、味わいも違う、
個性豊かなものになるよう造って参ります。

商品紹介および商品詳細の欄には、
予定する酒質やいろいろな情報を掲載いたしますが、
実際にお酒がお手元に届いて、お客様がどのように感じられるか、
どうぞその違いもお楽しみください。